So-net無料ブログ作成
  • ブログをはじめる
  • ログイン
前の2件 | -

正義 と お知らせ [シナリオ作法]

前回、脚本作りにおいては
自分が面白いと思うものを貫くだけが正義ではなく
観客・視聴者がみて面白くなることが正義だと書きました。
そのためにはまず
目の前にいる人たち:本打ちに参加してるプロデューサーや監督たちを
納得させる面白さにしなければならない、と。

ただし、中には自分を貫いた方が正解なケースもあるとも書きました。

nigaoe_augustus.png

通常であれば、意見交換や議論を交わした上で
「脚本をより良くするため」ならば
自分だけが持っている強いこだわりや思い入れは
引っ込めてしまった方が得策だったりします。
例えば――
脚本が長すぎてカットが必要になった場合
「一番気に入ってるシーンから削れ」――
なんて言葉があるくらいですから
強すぎるこだわりや思い入れをねじ込もうとすると
知らず知らずに脚本の出来をいびつにしてしまうものです。
ならば、まずは気に入ったシーンをカットしてみる
という先人の知恵なんでしょう。

ことほどさように
いくら自分は客観的に脚本をみているつもりでも
その客観性には限界があります。
独り善がりな表現に陥ってる可能性が高いってことです。
だからこそ
意見交換やダメ出しされることや議論することが必要であり
かたくなに自分を貫くのは得策ではありません。

しかし、それでも自分を貫いた方が正解なケースもあります。
それは、リライト地獄の無限ループ回避のためです。

wa_uroboros.png

oni_jigoku_kama.png

テレビ局や映画会社とのお仕事の場合でしたら
大抵は、タイムリミットで区切られているので
出口の見えぬまま、延々とリライトを繰り返すことはありません。

脚本の出来が良ければ早々に最終稿となって撮影に入りますし
出来が悪くてリライトを重ねても先方が気に入らないとなれば
「一旦、預かります」とか何とか言われて
他の脚本家に依頼されてしまったりする訳です。

が、そうではない場合が、あります。

脚本は映画やドラマの設計図ですので
施主の発注に基づいて作られます。
ざっくりしたイメージの発注からプロットや脚本といった
具体的な設計図を書き起こすのが脚本家の仕事。
で、打ち合わせによって、徐々にイメージ通りにリライトしていく作業を
施主と一緒にしていく訳ですが
まれに、同じところをグルグル回って前進したがらないタイプの人がいます。

リライトの無限ループをしていることが脚本作りをしていることだと
錯覚していて、イビツな充足感を味わっているタイプです。

そんな施主は
リライトしてきたものに対して脊髄反射でダメ出しを繰り返します。
脊髄反射なので、全体の流れは見てません。
個々のシーンの出来上がりのみにこだわります。
そして、なんとなくの違和感だけを理由にリライトさせます。
リライトされたものを読むと、また新しいアイデア(!)が湧いてくるので
そのアイデアを反映するよう指示されます。
結果、どんどん最初の発注から離れたものになっていきます。
で、「最初と全然違うじゃん!」と元に戻そうとジタバタしたり
ここまで違うなら、設定ごと変えちゃうか!とか言ったりします。
出口は見えません。
そういう人は、
「これじゃないんだよなぁ」とは言いますが
「じゃあ、どれなのか」というと、自分でも分かってないようです。

question_head_boy.png

このように
延々とリライトばかりを重ねるものの
いつまでもビジョンは定まらず、いたずらに時間だけを費やし
作家を消耗させ疲弊させ絞りカスのようにしておいて
ギャラを支払う素振りさえ見せないような
そんな人とお仕事してしまう場合があります。

どうにかして着地させようとする施主ならいいんですが
こういうリライト地獄を引き寄せる施主は
ダメ出しすることに快感を覚えてたり
リライトを提示するたびに別のアイデアが湧き上がることに
喜びを感じてるので、いつまで経っても
リライト→本打ちスパイラルから抜け出ようとしません。

こういう時が、
「自分の面白いと思う事を貫いた方が正解」のケースです。
頑として譲らず、戦ってください。
こっちの方が面白いんだ!と突破を試みてください。
そうしないと、その渦からは抜け出せないからです。

施主が納得すれば、よし。
納得しないのであれば、それもまたよし。
時間は無限ではありませんし
お互いの相性もあるでしょうから
そのお仕事からは撤退するのが得策です。

pose_hashiru_guruguru_man-1.png

ただし、本打ちとリライトを繰り返すのは通常営業ですので
5回や6回、いや、10回リライトしているからといって
これはリライト地獄や!と思わないでください。
それはただの「リライトの嵐」です。目的地に着いたら止みます。

同じところをグルグル回って前進しないのがリライト地獄です。
アリ地獄のように前進できずに中身を吸われて捨てられます。

rat_race_businessman.png

なので、「この人と本打ちしてても前進してる実感がない!」
と思ったら、思い切って我を通してみてください。
突破できたら、めっけもんですし
それでも同じことをダラダラ言い募るようなら撤退です。

その際、それまで書いてた分の脚本の処遇をどうするか
きちんと話し合って、できれば文書に残しておいた方がいいです。
でないと、後々トラブルになったりしますのでご注意を。

先ほども書きましたが、施主との相性もあります。
脚本家が変わったら意外とすんなり着地できた、なんてケースもあります。
有名なベテランの方から私にバトンタッチされたこともありますし
私が撤退したので、別の方にバトンタッチしたこともあります。
なので、どうしても無限ループを突破できないときは
面白い脚本作りに資すると思って
自ら撤退することも選択肢に入れた方がいいです。
なにしろ、面白い脚本作り、というのが正義なのですから。

私自身、ここ数年はそんなアリ地獄のような状況に陥ることもなく
デビュー作でお世話になった監督と再びお仕事をしたり
こつこつとプロットコンペの仕事をしたり
意気投合した方たちと仕事をしたりと
幸いにも消耗疲弊するようなことなく、地道に頑張っております。

その中でも、今夏、ご一緒していた皆さんとのお仕事は
私自身、初めての類のお仕事で、とても刺激的でした。
本打ちでの意見交換や議論も、とても有意義で楽しいものだったので
もう少し本打ちの回数重ねてもいいくらいに思ったものです。
そのお仕事に関して、このたび嬉しいお知らせを受け取ることができました。

それは……

「先進映像協会ルミエール・ジャパン・アワード」において
 VR部門の準グランプリを頂きました。

trophy_businessman.png

こちらに、ニュースリリースが出ております。
 
ルミエール・ジャパン・アワードというのは
VRや3D、4K8Kなどの先進映像技術コンテンツの普及発展を目指す
国際団体:先進映像協会の日本部会が開催しているコンクールです。

準グランプリを頂いた作品は、企業研修コンテンツで
上司世代とミレニアル世代にある隔絶感や
世代間のコミュニケーション齟齬を解消するための
ヴァーチャルリアリティー作品となっております。

作品の特性上、一般公開はしてませんが
もしかしたら、企業研修としてご覧になるかもしれません。
その際は、楽しみつつも自分とは異なる世代の立場になって
様々なことを学んで頂けたら幸いです。

地道に頑張ってたらいいことあるなぁ。

これからも頑張ります。

m_E383A9E383BCEFBC92.jpg

nice!(12) 
共通テーマ:映画

本打ち と 正義 [シナリオ作法]

酷暑が過ぎ去り、少しずつ秋の気配が感じられるようになりましたね。
みなさま如何お過ごしでしょうか。

私はといいますと、右手の指を怪我してしまいまして
このひと月ほど、難儀しておりました。
ちょうど、仕事がひと段落した後だったので良かったです。
なんだかいつも、ひと仕事おえると、風邪だの怪我だのしてる気がします。
たぶん、緊張感がゆるむんでしょうね。

hospital_taping.png

さて、前回は「本打ち」に関して少し言及しましたが
今回も、もうちょっとお話ししたいと思います。

脚本は、書き上げたらプロデューサーに渡して
それでおしまい…ではなくて
そこからが始まりです。

ドラマや映画の設計図な訳ですから
不備があったら大変です。
プロデューサーや監督の納得のいくものになるまで
話し合いをして書き直しがされます。
この話し合いを「本打ち」といいます。

あれこれ工夫して書き上げた脚本に対して遠慮会釈なしに
プロデューサーや監督が寄ってたかってダメ出しを言い募ります。
様々な要求や提案や疑問が投げかけられ
それに対する回答を求められます。
そして、その回答にすらダメ出しがあったりします。

本打ちに関して新人の方に伝えたいのは
心折れないように気をつけてください。ということです。
きっと、シナリオスクールでのダメ出しよりも数倍キツいと思いますが
それを乗り越えると
ひとりで書いては直しての繰り返しをしていた時よりも、
講師やスクール仲間の批評にさらされるよりも、
格段に自分に力がついたという実感が得られます。

tachiagaru_man.png

たとえどんなに初稿の出来が良くても
スポンサーや役者の事情を考慮したり
ロケ地や撮影スケジュールを考慮したり
様々な事柄の兼ね合いを調整する、という理由で
本打ちをする必要がでてきたりします。

向田邦子さんは
出演俳優ふたりのスケジュールがどうしても合わないという理由で
ふたりが同じフレームに入らなくても撮影ができるように
怒ったキャラをなだめるというシーンを
お茶の間ではなくて、部屋の中と廊下に分けたそうです。
怒ったキャラが自室に閉じこもり、
それをなだめるキャラは廊下にいる。
ふたりは襖を間に挟み、会話をする。
そんな風に変更したとのこと。

これなら別々に撮影できますし
お茶の間でふたり向かい合って話し合うよりも
絵変わりもしますし、襖がふたりの心の壁を表しているようで
見ている人たちにも劇的な効果を与えることができます。

このように、本打ちで提示された条件をただクリアするのではなく
作品としてのクオリティも高めることができるようにするのが
腕の見せ所、だと思います。

kinniku_hanasu.png

本打ち初回にプロデューサーや監督が険しい顔をしているのは
一瞬で肝が冷えるものですが、ニコニコしていても油断してはいけません。

映画「サイドウェイズ」の最初の本打ちの時、
亀山さんはニコニコして上機嫌でした。
そして開口一番「面白かった!」と言ってくれました。
あ、これは直しは少なくて済むかな、と思ったんですが
次の瞬間、嬉しそうな顔で「じゃあ、どこから直すかな〜♪」
と言ったので、ガクッとしました。
どうやら、出来が良かったら良かったで
リライト提案するのが楽しいとのことです。
なるほど、こうやって数々のヒット作を送り出したのねと納得。
貪欲に面白さを追求する姿勢が大切なんだな、と学びました。

別の作品で、他の脚本家の方と競合していた時のことです。
なんとか初稿コンペで勝ち上がり
競合相手の名前を聞いて驚いたことがあります。
そんな大物に競り勝った初稿ならリライトなんてそんなにないだろうな
と思ったのも束の間、怒涛のように本打ちを繰り返したこともあります。

出来が良くても、本打ちとリライトというのは必須なようです。
ならば、しっかりと本打ちに臨む気構えをしていた方がいいですよね。

本打ちに際して気をつけなければいけないのは
相手に遠慮して、あるいは議論するのが面倒で、
直しの提案を唯々諾々と受入れてしまうことです。

もちろん、直しの提案が納得いくものなら
素直に受け止めて直せばいいんですが
そうでないのなら、きちんと議論すべきです。

でないと、こんな風になるかもしれません――
ある提案通りに直したら、他のシーンとの兼ね合いで
なんだか周辺のシーンとのバランスがおかしくなった。
次の本打ちではそれらを調整するよう言われたので
周辺のシーンもリライトしつつ、整合性保つため当初のシーンもリライト。
次の本打ちでは、リライトシーンによって全体の印象が変わったので
そもそもの設定から再考してみようかと提案される。
困ったなぁと思いながら再考案を携えて次の本打ちに臨む。
するとその本打ちでは、またまた直しを言い渡されるんだけど
その直しの内容が、元々の脚本と同じ内容だった……orz
なんてことになったりします。

それで、あぁやっぱり最初のままで良かったんだねと言われればまだいいですが
「ほら俺の言った通りリライトしたら上手く着地できたよ」
なんて言われることすらあります。
元に戻しただけなのに、手柄横取りされた気分です。

これはまぁ極端な例ですが
思いつきのリライト提案を考えもせずに受け入れてしまうと
ひどく遠回りすることになってしまいます。
あるひとつのシーンを書くに至るまでの経緯を
本打ちを通してプロデューサーや監督がもう一度辿ってしまう訳ですからね。

なので、このシーン、このセリフ、この行動になったのは
こういう考えと効果を狙い、こんな経緯で決まったんですよ
と説明するのは大切です。

その上で変えた方がより面白くなるのなら
どう変えた方がいいか、きちんと話し合いをしましょう。

その脚本は、執筆時点で自分がベストだと思ったものです。
散々頭を悩ませながら、キャラクターに心を寄せて
作り上げてきたものです。
脚本に関して一番時間を費やし一番頭を使ってきたのは
脚本家であるあなた自身です。
どんなに有名監督でも、大物プロデューサーでも
臆することはありません。
自信をもって、作品を面白くするべく議論してください。

で、面白くなるなら、自分の思い入れとかプライドとか
そういうのはあっさり切り捨てて、リライトしてください。
面白くなることが正義です。

自分が面白いと思うものを貫くのも大事ですが
一番大事なのは、観客・視聴者が面白いものを提供することです。
目の前にいるプロデューサーや監督を納得させられない面白さなら
お茶の間や客席にいる人たちを満足させられることは難しいでしょう。

まぁ、中には自分を貫いた方が正解なケースもあるわけですが
それはまた次回。


nice!(23) 
共通テーマ:映画
前の2件 | -